彼女は頭が悪いから

  • タイトル:彼女は頭が悪いから 
  • 著者名:姫野 カオルコ
  • 出版社:文藝春秋

あらすじ:私は東大生の将来をダメにした勘違い女なの? 
深夜のマンションで起こった東大生5人による強制わいせつ事件。非難されたのはなぜか被害者の女子大生だった。
現実に起こった事件に着想を得た衝撃の「非さわやか100%青春小説」! 

目次

「頭がいい」とは、どういうことか

学歴が高いということは、頭がいいということだ。
そう思っていた。少なくとも、どこかでそう信じていた。
東大に入れる人間は、そうでない人間より「ちゃんとしている」と。

難しい問題を解ける。暗記量が多い。処理が速い。
そういう能力を、なんとなく「人間としての質」と結びつけていたかもしれない。
口では言わなくても、どこかで。


ぞっとした、というよりも

この小説を読んで、最初に来たのは怒りでも悲しみでもなかった。
ぞっとした、という感覚に近い。
でもそれは、加害者たちに対してだけではなかった。

読みながら、自分の過去がじわじわと浮かんできた。
猥談を聞いて、テンションが上がっていたこと。
女の子が乗ってくれていたのは、場を盛り下げないためだったかもしれないのに。

中堅大学にいたから、東大生のような「上から目線」はなかった。
でも、自分より勉強していない人を、どこかで下に見ていた。
その感覚は、同じ構造の中にあったのだと思う。


一番しんどかったのは、結末だった

加害者が捕まって、実刑を受ける。
それだけ見れば、物語は「解決」したように見える。
でも、誰の意見も、誰の見方も、何も変わらないまま終わる。

「頭の悪い女が騒いだ」という認識のまま、親たちは息子を哀れむ。
社会は、何も問い直さない。
その静けさが、一番重かった。

裁判で「勝った」はずなのに、何も変わっていない。
そのことの方が、事件そのものよりも、ずっと苦しい読後感だった。


「断れないなら行くなよ」と思いかけた

正直に書く。
読みながら、一瞬そう思った。
「思わせぶりなことをするから」「行かなければよかったのに」と。

でも、すぐに止まった。
彼女は、彼のことが好きだったのだ。
好きな人に誘われたら、行くだろう。それだけのことだ。

「断れないなら行くな」という論理は、
好意を持つことそのものを、リスクとして引き受けろということになる。
それは、きつい。あまりにもきつい。


学歴は、何を証明するのか

難しい問題を解けること。膨大な情報を記憶できること。
それは確かにすごい能力だ。否定しない。
でも、それが「人間としての良し悪し」に直結するわけではない、ということを、この小説は静かに突きつけてくる。

東大に入った彼らは、賢かったのだろう。
でも、目の前の女性が何を感じているかを想像する力は、持っていなかった。
あるいは、持っていたとしても、使わなかった。

勉強ができることと、人の痛みに気づけることは、別の話だ。
頭がいい、とはどういうことなのか。
読み終わったあと、その問いだけが残った。


切実な問いを、自分で見つけられるか

暗記して、問題を解いて、高い点数を取る。
その先に何があるのかを、誰も教えてくれなかったかもしれない。
「なぜ学ぶのか」を問わないまま、ただ正解を積み重ねてきた。

切実な問いを自分で見つけて、向き合って、また新しい問いを見つける。
そういうことができる人間を、社会は育てようとしているのだろうか。
それとも、正解を素早く出せる人間を、ただ選別しているだけなのか。

分からないまま終わる。
でも、分からないままでいることを、やめたくないとも思う。

自分への切実な問い

声を発していない人のことを、どうやって守ってあげたらいいだろうか。

関連サイト

東大新聞オンライン - 「東大の知...
「姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』ブックトーク」レポート ~「モヤモヤ」とともに振り返る~ - 東大新... 2016年、東大生・東大大学院生5人による集団強制わいせつ事件が起き、世間に衝撃が走った。あれから2年以上が
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次