「お兄ちゃんが悪いのに、なんでお兄ちゃんの肩を持つの?」——そう思ったことはありませんか?
今回の対談では、にったんが実践する「上の子をひいきする」子育て戦略が飛び出しました。最初は「え、それで本当に大丈夫?」と感じるかもしれません。でも聞けば聞くほど、なるほど……と膝を打つ話が続きます。さらに後半では、親としての価値観の伝え方や、小説から子育てを学ぶという意外な話題にも広がっていきました。
ゆるくて、でも深い。そんないつものふたりのやり取りをお届けします。
「上の子をひいきする」——理屈に反するけど、効く戦略
なぜ上の子の肩を持つのか
子どもが複数いる家庭で避けて通れないのが、兄弟・姉妹間のケンカ。多くの親がついやってしまうのが、「どっちが悪いか」を判断して、悪い方を叱ること。特に、明らかに上の子が原因のときは、下の子をかばいたくなりますよね。
ところが、にったんが先輩パパから教わった方法は真逆でした。どんな状況でも、まず上の子の肩を持つというもの。
その理由はシンプルです。兄弟ゲンカの多くは、上の子が「もっと構ってほしい」というサインとして起こります。下の子ができると、どうしても親の目が下の子に向きがち。上の子はその不満を、弟や妹へのいじめという形で表現してしまう。そこで下の子をかばうと、上の子はさらに「自分はわかってもらえていない」と感じ、またいじめる——この無限ループが生まれます。
逆に、上の子の気持ちを先に受け止めると、上の子が落ち着き、その後自然に下の子も泣き止む。これが、にったん家で実際に機能している流れです。
「明らかにお兄ちゃんが悪い」ときはどうする?
「それでも、おもちゃを取り上げたりした場合はさすがに怒るんじゃ……?」というしんしんの疑問に対するにったんの答えが、また絶妙でした。
たとえば弟がおもちゃで遊んでいるところに、お兄ちゃんが割り込んで取ってしまった場面。ここで「お兄ちゃん、ダメでしょ!返しなさい!」と叱るのではなく、弟に向かって「お兄ちゃんも遊びたいみたいやから、ちょっと貸してあげて」と声をかける。
すると不思議なことに、弟は渋々ながらも受け入れ、お兄ちゃんは逆に「申し訳ない」という気持ちになって、自分からおもちゃを返したりする——。毎回うまくいくわけではないけれど、この流れが生まれやすくなるそうです。
「信頼の残高」を積み上げておく
この戦略の根底にあるのは、信頼残高という考え方です。子どもがまだ小さくて理屈がわからない時期に、親は「この人は自分の気持ちをわかってくれている」という感覚を積み上げておく必要がある。
そうしておけば、8〜9歳になって理屈が理解できる年齢になったとき、多少強く言ったり、理由を説明したりしても、ちゃんと聞いてもらえる。それまでの蓄積が効いてくる、というわけです。
にったん家は現在3人きょうだい。一番上をとにかくひいきしつつ、上の子同士のケンカでは「どちらの対応か」を状況で使い分けているとのこと。完璧にはいかない場面も正直にあるそうですが、「結果的に下の子はお兄ちゃんが大好き」という言葉が、この戦略の効果を静かに証明しています。
「親の価値観を押し付けない」という、深い覚悟
「私たちが教えたことは、全て忘れなさい」
後半の対談で、しんしんが自分の結婚式にまつわるエピソードを話してくれました。にったんのご両親が式の日に言った言葉——「私たちが教えたことは、全て忘れなさい」。
一見すると不思議な言葉ですが、これは子どもへの深い信頼と愛情の表れです。自分たちの価値観を押し付けてしまうことへの戒め。そして「あなたはあなたの道を選んでいい」というメッセージ。
親がかけた言葉は、本人が意識していなくても、子どもの心に長く残り続けます。いじめと同じで、言った側は忘れていても、言われた側はずっと覚えている。だからこそ、この言葉がどれだけ「言える親」が少ないか、しんしんは強調します。
子育ては「親のため」ではなく
しんしんが語ったのは、育児において見落とされがちなある視点です。子どもを良くしようと自分を犠牲にしていると、「こんなにやってやったのに」という気持ちが生まれやすくなる。その結果、子どもが親の期待に縛られて生きづらくなる——これがいわゆる「アダルトチルドレン」と呼ばれる状態につながることがあります。
「子供があって親がある、じゃなくて、親があって子供がいる」というしんしんの言葉は、パートナーとのあり方にも通じる話です。自分自身を大切にしながら、子どもに向き合う。それが結果として、子どもの自立につながっていく。
パパとママで価値観が違っていていい
「夫婦で価値観を合わせよう」という話をよく耳にしますが、にったんは長男にこんなことを伝えているそうです。「パパとママは考え方が全然違う。だからその中から自分で参考になるものを選んで生きていっていいよ」と。
しんしんは仕事の関係で子どもと過ごす時間が限られているため、「どうしても母親の価値観に偏ってしまう」という正直な悩みも明かしてくれました。でも、その中でもパパとしての視点を伝え続けることに意味がある——そんなふうに前向きに捉えているのが印象的でした。
小説が教えてくれること——ビジネス書では届かない場所へ
対談の最後に話題になったのが、「小説を読む」ということ。にったんが最近感じているのは、まとまったノウハウ本よりも、小説の方が人の気持ちを想像する力が育つということ。
しんしんが挙げたのが、湊かなえの『告白』に登場する熱血教師のエピソード。過去にやんちゃをして、それを乗り越えて教壇に立った教師に憧れる人物が出てくるのですが、そこで語られる言葉が刺さったといいます。「道を外れずにちゃんとやってきた方が偉いに決まってる」——。
「悪いことをしてきた人が更生すると美談になりがちだけど、最初からそんなことをしない人の方が本当は偉い」という、ごく当たり前だけど言語化されにくいことを、小説はさらっと届けてくれる。しんしんが中学時代を振り返りながら語るシーンは、特に熱を帯びていました。
科学的根拠に基づいた心理学も大切にしているしんしんですが、「現場のカウンセラーの声も、小説の人物も、全部自分のテキストになる」という感覚はふたりの共通点。知識として学ぶより、物語として体感する方が、自分の中に残りやすい——そんな読書観が垣間見えました。
【ハイライト】今日いちばん熱かった会話
上の子ひいき作戦、その真意
しんしん:兄弟ゲンカがあったら上の方を持つっていう話を聞いたんですけど、その真意をちょっと聞いてみたくて。
にったん:先輩パパに聞いた話なんやけど、どんなときでも上の子の肩を持つ方がうまくいくよって言われてん。下の子をかばうと、上の子がまたいじめる。弟をいじめる。弟をかばうと、お兄ちゃんがいじめる。無限ループや。
しんしん:まずお兄ちゃんを鎮めて、弟は流しておく、みたいな感じ?
にったん:そう。お兄ちゃんが落ち着いたら、弟は後で落ち着くんですよ。それを信じて待つっていう感じ。
しんしん:でも下の子はそれでどうなるの?って純粋に思ってたんで、今回聞いてみたかったんよね。
にったん:結局下の子ばっかり泣いてるっていう構図にはなるんやけど、結果的には下の子はお兄ちゃんのこと大好きやし。ふとした瞬間に上の子が下の子を守ったり、優しく面倒見たりする瞬間もあったりするんで。直感に反するんやけど、この接し方してるとそうなるんよね。
しんしん:その瞬間、なんか胸が開けてきちゃうんですよね。
にったん:わかる(笑)。不思議やけど、そうなるんよ。
「私たちが教えたことは、全て忘れなさい」
しんしん:大人になるときに、私たちが教えたことは全て忘れるんですよね。にったんのご両親、結婚式の日にそう言ってくれたって話でしょ。
にったん:そうそう。あんまりこうしなさい、ああしなさいっていう親じゃなかったんやけど。あれがどういう意味なんかなってしばらく考えてたけど。
しんしん:それをちゃんと理解した上で言える人は立派ですよ。特にね、子育てって親のためにあるもんだと思うんですよ。子供のために親が何かを犠牲にすると、「こんなにやってやったんだから」ってなる。子供のためって言いながら、結局親のためになってたりする。
にったん:なるほど……。子どもは弱い存在じゃないし、自分でちゃんと選んでいけるってことを信じていいんじゃないですかっていう、そういうことかなって思ったりする。
しんしん:偉大な親じゃなきゃいけないことはないんだよ。全然ないよね。
にったん:なんか夫婦で価値観合わせようみたいな動きもよく聞くけど、全然合わせる必要ないんじゃないって思ってて。パパとママの考えが全然違うから、そっから参考になるのを自分で選んで生きていっていいよ、って長男にも話してるんですよね。
ちゃっかりオチもあります
しんしん:心理学を学ばないと奥さんのご機嫌なんか取れやしないわけです。これ、パンチラインね。
にったん:(笑)これ公開されるわけでございます。ここはカットしとこっかな。
しんしん:出すぞ。有料にしとこうかな、そこだけ。
にったん:うけるわ(笑)。
おわりに
「上の子をひいきする」という一見シンプルな話が、信頼残高の話、価値観を押し付けない覚悟、小説から人の気持ちを学ぶという話へ自然につながっていく——今回の対談はそんな広がりのある回でした。
子育てに「これが正解」はないけれど、こうやって誰かの実体験やリアルな感覚を聞けることは、教科書より何倍も響くことがある。にったんもしんしんも、きっとそう思いながら話していたんじゃないかな、と感じます。
あなたはどう感じましたか?ぜひコメントやSNSで感想を教えてください。「自分の家ではこうしてる」「これは難しかった」——そんな声も大歓迎です。このふたりとの対話は、まだまだ続きます。




