「自分、もしかしてフェミニズムが嫌いなのかもしれない」——そんな言葉が飛び出した瞬間、対談の空気が少しだけ張り詰めました。
今回は、村田沙耶香さんの小説『世界99』を読んで、にったんとしんしんが感じたことをじっくり語り合いました。本の内容はもちろん、男性として生きてきた中で抱えてきたフェミニズムへの複雑な感情、不妊治療のリアル、性教育の在り方、そして「パートナーを選ぶ」ということの意味まで——気がつけば、とても個人的で、でも誰かに聞いてほしかった話が次々と出てきました。
正直、かなりデリケートなテーマも含んでいます。でもだからこそ、読んでみてほしい対談です。
「フェミニズムが嫌い」は、本当にそう単純な話なのか
きっかけは、しんしんの告白でした。「俺、もしかしたらフェミニズムが嫌いなのかも」という言葉。でもすぐにこう続きます。「全部が全部ダメってわけじゃないんだけどね」と。
その言葉の裏には、若い頃に女性から「気持ち悪い」と思われてきた経験や、女性の上司に理不尽に目の敵にされた記憶がありました。そういった経験が心の奥底に積み重なってきたことで、「女性は大変だ」という声が大きくなるほど、「じゃあ、同じように傷ついてきた男性はどうなんだ」という気持ちが刺さってしまう——そんな率直な感情でした。
これは決して「男性優遇を守りたい」という話ではありません。しんしん自身もそこははっきり言っていました。ただ、「見下されてきた男性もいる」という事実が、なかったことにされている感覚が、どうしても拭えないのだと。
にったんはここで、少し違う角度から話を展開します。
「男尊女卑はよくないと思うし、そういう文化があったことはちゃんと反省する。でも、今度は逆に男性を下に見てOKみたいな空気になってきてるとも感じる」
「みんなを同じにしようとするのって、でこぼこした地面を無視して真っ直ぐな線を引くようなもの。そこを歩いたら絶対こける」
強引な均一化ではなく、それぞれの違いや得意不得意を認めた上で「適材適所」を探すほうが、男性にとっても女性にとっても、きっと生きやすい。そんな考え方でした。
『世界99』が刺さったのは、「加害者側」への共感だった
この小説には、主人公がモラハラ・DVを受ける場面が出てきます。しんしんが「ちょっとネタバレになるけど」と前置きしながら話してくれたのは、その加害者側の描写に「しっくりきてしまった」という体験でした。
「モラハラ気質が自分にもあるかもしれない。だからそこは気をつけなきゃいけない部分でもある」と、しんしんは正直に言います。
これは重要な気づきだと思います。暴力や支配は「悪いやつがやること」ではなく、ある種の恐れや傷つきが積み重なって出てくることがある。それを、小説を通じて自分ごととして受け取れた——それが、この本を読んで得た一番大切なことだったのかもしれません。
不妊治療と「自分のせい」という重荷
話は不妊治療にも及びました。しんしん夫婦はかつて不妊治療を経験しており、その当事者として語ってくれました。
「不妊治療を公表したくない女性って、『女性として欠陥があると思われる』という怖さがあるんじゃないかと思う」としんしんは言います。でも実際には、原因が男性側にある場合も少なくないし、どちらが原因かわからないケースもある。それでも女性が一人で「自分のせい」という重荷を背負ってしまいがちな現実があります。
にったんも共感しながら、「障害を持った子が生まれたときに、お母さんが自分のせいって思ってしまうのと似てる」と言っていました。「誰かのせい」にしなくていいことを、誰かのせいにして抱え込んでしまう——これはパートナーシップの中でも、一緒に向き合っていきたいテーマです。
性教育に必要なのは「三つだけ」でいい
おうち性教育に関する話では、しんしんが明快な持論を語ってくれました。
- 望まない子供を作らないこと(妊娠の仕組みを知ること)
- 性加害をしないこと
- 性被害を受けないこと
「この三つさえ知っておけば、防げることはほとんど防げる。それ以上は求めなくていいんじゃないかな」というのがしんしんのスタンス。
にったんも賛同しながら、「ハグするときは”してもいいですか”って確認してからしましょう」といった教科書的なマニュアルへの違和感を率直に話してくれました。「性ってロジックで全部解決できるものじゃないし、全員が同じような愛情表現をする漂白された世界になったらぞっとする」と。
性の多様性を認めることと、すべてをマニュアル化することは、まったく別の話です。
「一人を選ぶ覚悟」が、幸せに繋がる
対談の後半は、パートナーシップ論へ。ハーバード大学の大規模研究を引きながら、しんしんが言いました。「一番幸せを感じながら亡くなる人は、心の繋がりがある人がたくさんいる人だった」と。
それを受けてにったんが語ったのは、「一人を選んで、残りすべての選択肢を排除する覚悟が、逆に幸せに繋がるんじゃないか」という考え方でした。
「天国には二人でしか入れない」——ある本で読んだこの一節が、彼の中でずっと響いているそうです。一人のパートナーに覚悟を決めること。それ以外の選択肢に「違う」と言えること。それが、人生で本当に深い幸せを手にする唯一の道なのかもしれない、と。
ハイライト:正直すぎる二人のやり取り
しんしん:俺、もしかしたらフェミニズムが嫌いなのかも。女性が活躍すべきっていうのを強く言ってる人を、やっぱどうしても嫌やなって思ってしまう。若い頃に、女性から気持ち悪いって目で見られた経験が心の奥底にあるから。
にったん:でも、そういう見下されてた経験がある人の気持ちって、刺さる人には刺さるんじゃないかな。にったんみたいにイケメンって言われてる側からは、あんまり発信できない部分だしね。
しんしん:そうなんよ。でも今は結婚して子供もいて、あんまりそういう感覚は出てこなくなった。独身のままだったら、多分そのままひねくれて一生終えてたと思う。
にったん:男尊女卑はよくないし反省するけど、今度は逆に男性を下に見てOKって空気になってきてるとも思う。みんなを無理に同じにしようとするのって、でこぼこした地面に真っ直ぐな線を引いて「これが道です」ってするようなもんで。そこを歩いたら絶対こけるじゃない。
しんしん:絶対そうやと思う。違いを無視して無理やり合わせたら、どこかで歪みが出る。
にったん:ある本に「天国には二人でしか入れない」って書いてあって。一人のパートナーを選んで、その人以外は「違う」って決める覚悟が、唯一天国に行く道だって。これ、すごく好きな考え方なんですよ。
しんしん:幸せって何かっていう話で言うと、ハーバードの研究でも心の繋がりがある人が一番幸せだって結論が出てる。お金でも名声でもなくて、繋がりなんよね。
にったん:(笑いながら)……って言いながら、もう離婚したいなって思う瞬間は何回もあるんですけどね。でもコミュニティのメンバーがいるから、まあなんとかなるかって。
しんしん:それでいいんじゃないですか(笑)。
「フェミニズムが嫌い」という一言は、そのまま受け取れば反感を買うかもしれません。でも対談を通じて見えてきたのは、傷ついてきた経験を抱えながらも、パートナーや子供と向き合い続けようとしている男性の、正直な声でした。
『世界99』は、そういう声を引き出すきっかけになった一冊です。男女の関係性、支配と傷つき、愛すること——気になった方は、ぜひ手に取ってみてください。読んだ感想、ぜひパパ育でも話しましょう。




