ビリーフ

 人は成長の過程で学習します。親から学び、先生から学び、学校や友人の関わりの中から学び、社会や組織から学び、あるいは自らの体験から学び、私たちは生まれてから現在に至るまで学習を続けながら成長してきています。そしてこの学習の過程で、一回あるいは複数回の体験を通して、ある事柄がまるで「真実である」または「当然である」かのような確信に近い状態に至ることが多々あります。

 これが信念/思い込み、 つまりビリーフ (Belief) の正体です。

 子供の頃に逆上がりができるようにならなかったり、まわりの子に比べて足が遅かったり、 体育の点数が低かったりすると、

「私は逆上がりができないし、足が遅いし、体育の点数も低い…だから、私はスポーツが苦手だ」

というビリーフが出来上がります。そして何か新しいスポーツに挑戦する機会があっても 「私はスポーツが苦手だから、新しいことをやってもどうせ上手くいかない」と不必要なビリーフを強化してしまうのです。

 ビリーフを扱うにあたって大切なことは、必要か不必要か、あるいは役に立っているか役に 立っていないかを明確に判別するということです。そしてあなたの望ましい未来ためには、制限をかけているビリーフを外して、新しいビリーフに書き換えることが必要です。

 マイナスなビリーフは柔軟性を奪い、選択の幅を狭め、 思考や行動を著しく制限します。 これらを外して書き換える、あるいは幅を広げることで、 新しい可能性を発見したり、 思考 や行動に望ましい変化を与えることができます。

 昨日まで必要だと思っていたことが、 あなたが望む明日に必ずしも今も必要だとは限らない のです。

ビリーフの構造

  ビリーフには、2種類の形があります。

①因果関係:(原因・証拠)が起こったら→(結果・基準)も必ず起こると思い込んでいる状態

例:雨が降ったら → 気持ちが落ち込む

②複合等価:(原因・証拠)と(結果・基準)は、全く同じものだと思い込んでいる状態

 

例:体育会系の人は = 無神経だ。

日々の会話の中でいろいろなビリーフに自覚的になれれば、必要か不要かを判断できるようになり、より自由な思考ができるようになります。

人との会話の中で、ビリーフがたくさん隠れていることに気が付くことができれば、目標を実現する際に必要か不要かを判断することができ、より望ましい人生を生きられるようになります。

ビリーフを整理する

 ただ、何かを思い込んでいる状態なので、なかなか表面化せず、整理することからスタートする場合が多いです。
 例えば、「はぁ…私ってなんで私は何もできないだろうなぁ…」というクライアントの発言です。何をどう思い悩んでいて、何がそう思わせているのか、この文章だけだと不明です。

 ただ、ビリーフの構造を整理するためには、とにかくクライアントの発言飲みに基づいて、矢印やイコールでつなげてみればいいというものではありません。

 例えば、「自信がないから」→「私は何もできないんです」と言っているクライアントがいたとします。これは、どちらも主観であり、いうなれば言い換えているだけです。客観性がなく、原因とは考えられません。

 カウンセラーは、質問をしたり、他のいろいろな発言から、上記の図でいうと緑の部分をある程度明確にしようと試みます。

 例えば、下記のような意味合いを持つ質問をして、ビリーフを整理します。

  • 「何を見たら、何を聞いたら、何を感じたら、自信がないということがわかるのですか?」
  • 「自信がない、ということは、どうすればわかるのですか?」

 自分のビリーフに自覚的になることに慣れていないクライアントであれば、この質問の意図をくみ取ってもらうことに少し時間を要します。
「え…いや、何もできてないなぁと思ったら、自信がなくなってくるんです」といったように論理が循環してしまったり、「やらなくちゃとはおもうんですけど、できない気持ちになっちゃって」などほかの話になったり、別の表現に変わるだけということが起こりがちです。

 そこでカウンセラーは根気よく、そのきっかけになる客観的な事象を引き出せれば、ビリーフをあぶりだせたことになります。

 客観的な事象とは、例えば、「上司のAさんの顔を見たら」とか、「昔、父にお前は何もできない、と言われた声を脳内で再生しちゃったら」などです。辞書的な意味では、脳内の出来事は客観的ではありませんが、自分にとって不要なステイトを引き出すきっかけになることを探し出します。

 ビリーフを整理したことによって、昔、父に皮肉を言われたことがトリガーになっているということが分かれば、そのサブモダリティを変えてあげればいいでしょう。

 また、そのビリーフがクライアント本人にとって必要なものであればそのまま保持しておいて構いません。もっと強化してもいいでしょう。ただ、不要な場合は変える必要があります。

 

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