にったん「それでは。昨日、スタッフが“全力でおすすめする本”を送ってもらって、知ってるやつもあるし、“なんじゃこれ”っていうのもあるし、“聞いたことあるな”っていうのもあるし。いちばん気になったの、どれですか?」
世界99という衝撃
しんしん「いやあ、『世界99』ですね。“これが1位なんや”って。これが1位っていうのが、いいですよね」
しんしんがそう言うと、私も思わず頷いてしまった。
にったん「紀伊國屋書店の店員さん、みんな頭おかしい(笑)。でもやっぱり本好きの人は、これの良さをわかってるっていうのが、ちょっと嬉しい感じがする。これ見てて思った」
しんしん「頭おかしいって言われてもいいから、他人にすすめたい本ですよ」
にったん「すごい本でしたね。先日、東京オフ会に参加したとき、文芸コーナーのいちばん目立つところに飾られてて、そこで売ってたんですよ」
にったん「目立つから読んでみたけど、“なんじゃこの作品は”っていう。よくおすすめできるな、って思うくらい」
しんしん「作者本人も、書きながら“怖い”って言ってたよね」
にったん「え、そうなん!? もっと軽快に書いてるんやと思ってた」
美しく静かで穏やかな地獄
にったん「でも推薦コメントに『気軽にすすめられる作品ではない』って書いてあって。“わかってる人がいる”って思った」
しんしん「気軽にはすすめられないですよね。すすめた人は頭おかしい。でもそれでも他人にすすめたくなる。不思議さがある」
しんしん「僕がこの作品を説明するときは、こう言うんです。ここに書いてあるのは地獄だと。美しく、静かで、穏やかな地獄が書いてある」
にったん「でも現実と関係してるところが結構あるから、言語化するのが気持ち悪い。単純に“なんじゃこれ”っていうより、最後まで読むと“全くの他人事じゃない”って思う。こういうところに落ちた人、いるんじゃないかって」
しんしん「現代社会の闇を描いてるって、本人も言ってるんですよね。いじめ、性加害、性被害、モラハラ、DV、人種差別……ありとあらゆる闇に触れてる。すごいよね」
心の暗い部分を掘り返される感覚
しんしん「みんなが思ってるけど、押さえつけて抑圧してる心の暗い部分――闇の部分を、この本は重機で掘り返して、目の前に差し出してくる。“目の前を取り繕ってるけど、本当はこう思ってるんでしょ”って」
にったん「そうだよね」
にったん「正直、読んでるとき、すごい幸せな気持ちだったんです。ずっと」
しんしん「上巻を読み終わって下巻に行くとき、“この時間終わっちゃうんだ”って思う。闇を見せつけられてるのに、自分のモヤっとした暗い部分が引き出される。なのに自分は普通に生活してる。ある種、動物園の檻を見てる感覚に近いのかも」
にったん「なんかそんな感じだったね」
反省という名の気持ち悪さ
しんしん「衝撃的だけど、誰にもすすめたくない気持ちもある。恐ろしいことが書いてある。でも、みんな読んだ方がいいとも思う」
にったん「自分は“早く終われ”って思いながら読んでた。動物園の話にもつながるけど、今までの彼女とか、好きになった女性に対して、自分がやってきたこと――“女性を、男性の性欲の文脈で見てた”みたいな申し訳なさが積み上がっていって、反省というより、気持ち悪さが残った。妻にもこの話はしてて、“早くこのしんどさから出たかった”みたいなのもあった」
しんしん「実は“アラート”が出てるんですよね。心の暗い部分やトラウマがフラッシュバックする可能性があるから気をつけてください、って。にったんの場合もそういうのがあったかもしれないけど、もっと重たいものが反応する人もいるかもしれない」
にったん「自分は“やった側”で、被害を受けてない。だからこそ、殺された女性側の視点に立つと、もっときついだろうなって思った。妻とか女性の方が、きついよなって」
女性のことを何もわかってなかった
にったん「女性のこと、本当に何もわかってへんなって思ったのは、この本かもしれない。脳の違いとか、そういう本を読んでも全然足りない。結局、“自分がどうやってその方向(性的な関係)に持っていくか”のヒントにしてただけで。触ってないから犯罪じゃない、みたいな男の考えって、女性には透けて見えるし、それが気持ち悪いっていうのが、『世界99』はもっとはっきり出てた。男尊女卑なんて思ってないつもりでも、結構してるなって思った。『世界99』だけで2時間喋れそう」
しんしん「2時間じゃ収まらないよ」
他の本たちについて
にったん「他のやつも行きましょうか?」
しんしん「はい」
にったん「この『僕には鳥の言葉がわかる』っていうのも面白そう。鈴木保奈美もすすめてた」
しんしん「面白そう。読んでみたい。フィールドでやってる学者さんですよね」
しんしん「あと、タイトルだけで『ロシアの技術』とかも読んでみたら面白そう。結局、僕まだ伊坂幸太郎を一冊も触れてないんですよ。水戸さんは好きみたいで、3冊くらい読んだかな」
にったん「ライトな感じが好きな人は、多分好きだと思います。僕はかなり重いのが好きなんで、そういう人にはパンチが足りないかも。面白くなくはないんですけどね」
しんしん「淡麗の“薄い塩味”みたいな感じで」
ブレークショットの軌跡と伏線回収
にったん「『ブレークショットの軌跡』も面白いって聞く。読んだ?」
しんしん「読んだ。面白かったけど、ちょっと間延びしたかな。そんなに話を広げなくてもいいのに、って思った。伏線を張りまくってて、回収はすごい。スッキリはする」
にったん「ビリヤードの話ってのは知ってる。過去をガーッと描いて、最後につながる展開なのかな、くらいの予想」
しんしん「作中に実在する車の名前も出てくるけど、“ブレークショット”っていう車を巡る話。面白いけど、こねくり回さなくても…ってのが僕の感想」
最後に読んでいる本の話
しんしん「あと、今読んでる『ガスを取り憑かれて踊り疲れて』。これ面白いですね」
にったん「まだ終わってない。今までにない作風というか、文章の進め方というか」
しんしん「塩田武士がYouTubeか何かでインタビュー受けてて、“文春砲に宣戦布告”みたいな意味合いで書いたって話してた。しかもこれ、文芸春秋の連載だったらしい」




