
- タイトル:娘のトリセツ
- 著者名:黒川伊保子
- 出版社:小学館
あらすじ:父親にとって、無条件にかわいいのが娘。
幼い頃には
「大きくなったらパパと結婚する」
といっていた娘が思春期になると豹変し、
「ウザい! あっちへ行け!」
と言われて深く傷ついている父親も数知れず。
しかし、それでも。娘を幸せにするのは、父親の責任である。
そして娘が幸せになるかどうかは、実は父親の接し方にかかっている。父の愛は、娘の一生を守るのだ。
娘を持つ父親なら誰もが必ず読んでおくべき必読の一冊。
なんとなくの父親の正しさ
一般的には、娘はとにかく可愛がった方がいいと言われる。
父親にとって娘は特別で、甘やかすくらいがちょうどいい。
娘が泣いたら、まず守る。
妻よりも娘を優先する。
そういう父親像は、どこかで「正しいもの」として共有されている気がする。
でも、『娘のトリセツ』を読んで、その前提が少し揺れた。
娘を一番にすることが、必ずしも娘のためにならないのかもしれない。
むしろ逆のことが起きている可能性がある。
そんな感覚が残った。
娘を見すぎることの違和感
本の中で語られていた「自我の肥大」という言葉が、妙に引っかかった。
女の子は、自分を見てほしいという感覚が強く育つ。
それ自体は自然なことだが、周囲が過剰に反応すると、その感覚だけが膨らんでいく。
実際の身体や立場よりも、意識だけが大きくなる。
前髪の長さ、服のちょっとした違い。
大人から見れば些細なことでも、本人にとっては重大になる。
そこに親が過度に反応すると、
「世界は自分を中心に回っている」という誤解が生まれる。
父親が見せているもの
印象的だったのは、父親の立ち位置についての話だった。
父親は娘を一番にする存在ではない。
父親が一番に思うのは、母親である。
その姿勢を、言葉ではなく態度で示すことが大事だと書かれていた。
娘が母親に怒っているときでも、父親は母親側に立つ。
娘をなだめるとしても、「ママを傷つけていい理由」にはしない。
この構図を見て育つことで、
娘は「自分が世界の中心ではない」という現実を、自然に学ぶという。
それでも、怖さは残る
正直に言えば、この考え方には少し怖さもあった。
娘が拗ねるのではないか。
距離ができてしまうのではないか。
そんな不安がよぎる。
でも、本を読み進めるうちに、
それは「嫌われる怖さ」ではなく、
「好かれ続けたい父親の不安」なのかもしれないと思った。
お姫様にしないという選択
父親が娘を守るために母親を下げる。
その積み重ねが、娘を“お姫様”にしてしまう。
そう言われると、思い当たる場面がないわけではない。
娘にとって本当に必要なのは、
自分だけを見てくれる人を囲い込むことではなく、
自分を大切に扱う関係を、自分で選び取れる力なのだと思う。
どんな背中を見せているのか
この本を読んで、
娘に何を言うかより、
妻とどう向き合っているかの方が、
ずっと問われている気がした。
父親が母親を尊重している姿。
対等なパートナーとして扱っている姿。
その日常こそが、娘にとっての基準になる。
娘にとっての「理想の相手」は、
将来どこかで、
父親と母親の関係性をなぞるのかもしれない。
そう考えると、少し背筋が伸びる。
娘をどう育てるかは、
まだ正直、よく分からない。
ただ、娘を一番にし続けることだけが愛情ではない。
その違和感を、今は手元に残しておきたい。





